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5.4 その他の検証法の考察

本節においては、「SHIP A」の実船計測データの中、7次航のものを中心として選び、いくつかの側面から実船計測データとストリップ法による計算値との比較検証を行った。最近、大型船の積荷重に関連して、従来のストリップ法から得られる短波長域における波浪変動圧の推定精度向上が、主として模型試験結果との比較より指摘され、これらの改善策も提案されている。また、波浪変動圧の非線形影響や、応答間の位相差などの的確な把握も船体構造に作用する荷重及びそれに対する構造応答評価の信頼性を高める上で重要である。そこで、上記の点をより詳細に検討するために、実船計測データの時系列解析など、5.1、5.2とは異なる方法を用いて、波浪変動圧計算法の検証を行った。
すなわち、
1)遭遇した海洋波のスペクトルを推定し、波浪変動圧の周波数応答関数を検証する方法で、まず、計測された船体運動から波スペクトルを近似的に推定し、線形重ね合わせ法を用いて波浪変動圧のスペクトルを計算によって求め、これを計測された波浪変動圧のスペクトル並びに標準偏差値と比較した。これに対し、5.1、5.2では、波スペクトルをいわゆるISSC型と仮定し、単位波高当たりの波浪変動圧の標準偏差値を比較しているが、本方法では、実際に遭遇した海洋波のスペクトルを推定して用いている点が異なる。
2)波スペクトルを介さずに波浪変動圧の周波数応答関数を検証する方法で、ここでは、運動加速度と波浪変動圧の時系列を用いて、これら時系列間の関連性をクロススペクトルを求めて、計算結果と比較した。本方法では、実測されていない不確かな波スペクトルを介さずに、運動加速度に対する波浪変動圧の周波数応答関数が検証できる。
3)波浪変動圧の断面分布を検証する方法で、実船計測された運動、相対水位、波浪変動圧などの時系列データから波浪変動圧の断面分布を作画し、これを計算値と比較した。ただし、計算値は、厳密には非線形計算法によって求めるべきであるが、ここでは近似的に通常用いられる線形計算結果と比較した。
以上のように、5.1、5.2とは異なる方法を用いて、波浪変動圧計算法の検証を行ったが、今回解析した範囲内においては、実船計測データとストリップ法による計算値とは、波下側水面付近の値を除いて比較的良い対応が見られた。この場合、遭遇した波スペクトルを用いた推定値の方がISSC型のものに比べ実船計測値により近い値を与えた。従って、実船計測値と推定値の検証においては、遭遇した波スペクトルや非線形計算法による結果も考慮しながら今後さらに詳細に検討する必要があると考える。

 

5.5 バラスト水を考慮した船側波浪変動圧

荷重・応力計算法についての今後の課題の一つとして、バラスト水や原油などの液荷の影響がある。即ち、内部の液荷が自由表面を有する場合には、船体の動揺に伴って液荷も動揺するため、船側の外部のみならず、内部にも変動圧力が働く。このような内部圧力は、たとえばデッキと船側外板との接合部に働く曲げモーメントなどに対して、場合によっては無視できない寄与を及ぼす可能性があり、内部圧力を外部圧力との位相差をも含めて推定する必要がある。本研究部会では、平成5年度よりバラスト水を考慮した船側波浪変動圧の解析法の開発を行ってきた。
まず、内部自由水を有する浮体の波浪中の運動・浮体内外部の波浪変動圧力の計算法を開発した。本計算法は、特異点分布法を用いて、内部・外部における流体運動の支配方程式(連続の式、自由表面条件、物体表面条件)と、浮体の運動方程式を連立させて解くもので、自由表面条件としては、浮体内外部共に微小水面変位を仮定した線形自由表面条件を用いている。本計算法の有効性を検証するために、浮体両舷に設けた2つのバラストタンクに半分まで水をいれた状態で、水槽試験を行った。浮体動揺・浮体内外部の変動圧力の計測結果と計算結果との比較例を図5.5.1に示す。
次に、本計算法を既存のストリップ法プログラムに組み込む方法を示し、試みに、全長175mのカーゴシップ(SR−175船型)を例にとり、船体の仮想区画にバラスト水が搭載されていると仮定して、フルード数0.275・向い波状態に

 

 

 

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